着物の着付け方は男女で異なる?違いを具体的に紹介
着物は、現代においては女性が着るものというイメージが強いかもしれません。しかし、歴史的には男女ともに着物・和服を着てきた背景があり、男性でも着付け方次第でおしゃれに着物を着こなせます。今回は、着付けの男女で異なるポイントにスポットを当てて、詳しく解説をしていきます。
着付けの男女で異なるポイント
着物の着付けには、男女でいくつかの重要な違いがあります。
帯の結び方・締める位置
まず、帯の結び方や締める位置が異なります。男性は腰付近で帯を締め、体を横から見たときに帯が前下がりになるのに対し、女性は胸と腰の間(ウエスト)で帯を締め、横から見たときには帯が水平になるように着付けます。また、帯の種類や太さも異なり、男性は主に「角帯」と「兵児帯」の2種類を使用し、幅は10〜11cm程度の細いものが一般的です。一方、女性の帯は丸帯、名古屋帯、袋帯、半幅帯などの多様な種類があり、幅は約30cmと広くなっています。
女性の着付けには衣紋を抜く作業が含まれる
さらに、女性の着付けには「衣紋を抜く」という作業が含まれます。これは、後ろ側の衿と首の間に隙間を作ることを指し、女性らしい印象を与えるために重要です。逆に、男性は衿と首を密着させて衣紋を抜かず、凛々しい印象を持たせます。
男性の着物にはおはしょりがない
男性の着物には「おはしょり」がなく、元々身丈が短く作られているため、腰の部分で着物をたくし上げる必要がありません。女性は着物の身丈より長く作られ、腰の部分でたくし上げて調整します。この際、たくし上げた部分が「おはしょり」と呼ばれ、帯の内側で固定されます。おはしょりは平安時代の着物のスタイルを反映しており、動きやすさを考慮した結果として生まれました。
小物の数も男女で異なる
着付けに必要な小物の数も男女で異なります。男性の場合、着物や帯、長襦袢、半襦袢、肌襦袢、腰ひも、足袋、草履などがあれば基本的に問題ありませんが、女性はこれに加えて衿芯、帯締め、帯揚げ、帯板、帯枕、伊達締め、タオル、髪飾りなど、さまざまな小物が必要です。これにより、女性の着付けは準備が複雑になります。
着崩れのしやすさ
着崩れやすさについても男女で差があります。男性の着物は着付けがシンプルなため、着崩れにくく、もし着崩れてもすぐに直すことができます。対照的に、女性の着付けは手順が複雑で、特に「身八つ口」や「おはしょり」を作る必要があるため注意が必要です。身八つ口は着物の脇にある開口部で、着崩れの原因となることが多いです。
袴の向きは男女ともに右前
着物の衿の向きについては、男女ともに「右前」に着ることが基本です。自分の体に対して右側の衿が下になるのが右前とされ、左前は故人に着せる死装束にのみ用いられます。このため、左前で着付けることは縁起が悪いとされます。左前はマナー違反となることもあるため、注意が必要です。また、肌襦袢や長襦袢も右前で着用するのが基本です。
着物の格も男女で違いがある
着物には、男女で異なる「格」があり、それぞれの場面にふさわしい装いが求められます。この「格」は、フォーマルなパーティーにタキシードを着ることに似ており、場面に応じた適切な着物の選択を指します。
女性の着物の「格」
女性の着物は、主に4種類に分類可能です。第一礼装(最礼装)は最も格の高い着物で、公的な儀式や結婚式、成人式などの重要な場面で着用されます。代表的なものには、花嫁の衣装である「白打掛(白無垢)」や成人式で着る「振袖」があげられます。
次に、準礼装(略式礼装)は第一礼装に次ぐ格で、幅広いシーンで着用可能な着物です。「訪問着」や「色留袖」など、絵羽模様が施されたものが一般的で、七五三や入学式などにも適しています。続いて外出着は、礼装ほどかしこまらない場面で着用される、汎用性の高い着物です。食事会や友人との集まりなど、カジュアルなシーンで重宝します。
最後に、普段着・浴衣・街着があります。最もカジュアルなカテゴリで、日常的な外出やリラックスしたシーンで着用される着物です。
男性の着物の「格」
男性の着物も4段階に格付けされますが、女性に比べて種類は少ないです。まず、男性の場合、第一礼装では袴と羽織を着用します。袴にはズボンのように分かれている「馬乗(うまのり)袴」と、スカートのような「行燈(あんどん)袴」があり、どちらも礼服として用いられます。
続いて、準礼装の際も袴と羽織を着用しますが、デザインや素材に工夫が施されることが多いです。次に、外出着についてです。外出着のスタイルでは、基本的に袴は着用せず、紋も付けないシンプルな装いが一般的になります。
最後に、普段着の際も袴を着用せず「着流し」と呼ばれる羽織を着ないスタイルが主流です。着流しは、よりカジュアルな印象を与えます。
まとめ
着物の着付けは、男女で明確な違いがあり、それぞれの特徴が美しさや格を引き立てています。男性は、帯を腰付近で締め、シンプルな着付けが特徴で、着崩れしにくいのが利点です。一方、女性はウエストで帯を締め、衣紋を抜くことで女性らしいシルエットを作ります。また、小物の数も女性が多く、準備が複雑になります。着物の格も男女で異なり、女性は第一礼装から普段着まで4種類に分類されるのに対し、男性は4段階の格付けながら種類が少ないのが特徴です。これらの違いを理解することで、着物の持つ文化や美しさをより深く楽しむことができます。